- REPORT No.2 - 2011/2/22 New Zealand Earthquake (M6.3)


2011/02/28.SDR

2011年2月22日に発生したニュージーランド(NZ)地震に対する警報シミュレーション

中村 豊
SDR/東京工大

 クライストチャーチに大きな被害をもたらした2011年2月22日のNZ地震の強震記録を使って、地震早期警報のシミュレーションを行ってみました。
 下図がその結果で、横軸に震央距離(対数表示)、縦軸に地震発生後からの経過時間(秒数)、を示しています。図中の黒実線はP波到着時、赤丸を結んだ赤線はオンサイトのフレックル警報(警報トリガー・リアルタイム震度RI=1.5)、紫の実線はS波到着時、を表します。小さな丸を結んだカラーの細線群は、リアルタイム震度RI=1.0、2.0、3.0の発現時です。また、黄色の領域はRI=4〜5、ピンクの領域はRI=5〜6、赤の領域はRIが6以上を示します。さらに▲印と△印は、5HzPGA(周波数帯域を5Hzまでに制限した水平2方向合成加速度で、被害との関連性があるとされています)でそれぞれ10Gal以上、40Gal以上となるところです。これによると、例えば10Gal以上の警報は、震源域では実質的にP波警報になることがわかります。

 被害は概ね震央距離10kmより近いところで発生しているようです。例えば、震央距離10kmの地点でみると、地震後1秒足らずで最初のフレックル警報、地震後2秒でP波到着、その0.3秒後にはオンサイトフレックル警報、P波後1.5秒してS波が到着、さらに0.5秒から震動が大きくなり、さらに5秒後には最大動に達し、その後次第に震動は小さくなります。震度4以上の揺れは20秒近く継続したものと推測されます。
 もっとも震央に近いところのオンサイト警報でも大きく揺れだすまでには1秒程度あります。最大動まではさらに3秒程度期待でき、短い時間ながら、近くの安全ゾーンに避難することができる可能性があります。もちろん、安全ゾーンを作っておくとともに、普段から安全ゾーンとの位置関係を確認し、避難訓練を怠らないことが重要であることは言うまでもありません。
 地震発生時には、災害が発生した場所を迅速に把握し、救援に向かうために、正確な震源情報が欠かせません。直下地震に対する有効な警報は国家機関では出せませんが、被災地を特定するのに重要で正確な震源情報は現状では国家機関でしか把握できません。
 地震防災の基本は耐震化であり、不測の事態を避けるための早期警報は国家機関では実現不可能です。国家的な地震観測機関は、不幸にして発生してしまった大規模災害にいち早く対応するための正確な震源情報を迅速に通報することに全力を注ぐべきと考えます。このことは何度も指摘してきましたが、今回のNZ地震でも改めて確認されました。思わぬ大きな災害が発生する前に気象庁が考え方を改めることを切に願うものです。

以上


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