2003 Jan. 22,   Colima, MEXICO Earthquake

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2003年1月22日02時06分頃に発生したコリマ市付近の地震に対するメキシコシティー・ユレダスの動作状況
(株)システムアンドデータリサーチ
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1. はじめに
 SDRはメキシコ地震計登録設置機関(CIRES:アカプルコ周辺で発生する巨大地震を監視して発生と同時にメキシコシティーに警報を発する役割を担っている)の協力の下で、ユレダスをメキシコシティーに設置して観測を続けている。ユレダスの検知情報はCIRES本部におかれたユレダスセンターに無線中継されるとともに、直ちにCIRES側システムに取り込まれる。取り込まれた地震情報はCIRESから関係者にネット配信されている。観測は1999年10月30日に開始されたが、当初の観測点は交通ノイズが大きかったので、比較的ノイズが少なく堅固な場所であるNo.78強震観測点の近傍に2001年12月14日に移設している。この移設時からネット配信がはじまり、これまでにゲレロ沖の地震を中心に100個ほどの地震を検知して情報を送信している。これまでの観測によれば、P波段階では震源距離は遠めに推定され、マグニチュードは1ほど過小評価することが確認されている。また、S波段階での震源距離や震央方位については概ね妥当な値を与えることが分かっている。こうした経験に基づいた内部パラメータの更新を計画しているところであるが、まだ実施していない。


2. 動作状況
 報告の対象とした地震の諸元はUSGSによれば以下のとおり。
          ○ 震源時:2003年01月22日02時06分35.89秒(UTC:世界標準時)
                                         21日20時06分35.89秒(現地時間)
                                         22日11時06分35.89秒(JST:日本時間)
          ○ 規 模:Mw7.8
          ○ 震 源:北緯 18.807度
                        西経 103.886度
                       (メキシコシティーから400km西)
          ○ 深 さ:5km

 この地震に対するメールは22日11時8分30秒頃(JST)には日本のサーバに配信されている。受信した地震情報は以下のとおり。
          ○ 地震検知時間:2003年01月22日02時07分51秒(UTC)
          ○ 一次(P波)推定諸元: CIRES側受信時間:2003年01月22日02時07分56秒(UTC)
                                            地震規模:M6.8
                                            震央方位:280度
                                            震源距離:232km
                                            深 さ :134km
                                            (この時点で震央はメキシコシティーとコリマ市のほぼ中間に推定されている)
          ○ 二次(S波)推定諸元: CIRES受信時間:08分53秒(UTC)
                                            震源距離:442km
                                            深 さ :255km
                                            (この時点で震央はコリマ市北東60km程度と推定されている)

 UNAM(国立自治大学)によるメキシコシティー近傍の観測地震波形によれば20時07分50秒付近(現地時間)に最初の地震波動が到達している。震源距離が400km程度あるため、メキシコシティのユレダスがP波の段階で地震を検知してから大きく揺れ出すまでの時間、いわゆる初期微動継続時間は1分以上あったものと推測される(次節のユレダス観測波形参照)。
 ユレダスによる地震情報によれば、最初の地震波動が到達したと同時に数百km西方でM6.8(前述したようにこれまでの経験によればM7.8程度)の地震が発生したことが推測され、約1分後に大きな地震動が到来した時点で、震源はコリマ市近傍であることが判明している。
 メキシコシティユレダスは調整中であり大きな地震だけを検知するようにはなっていない。しかし、今回の地震に対する動作状況をみれば、災害軽減に効果があることが明らかである。もちろん、適切な運用が必要であるが、今後早急に内部パラメータを是正して推定精度を高めるとともに、運用方法についてCIRESと協議したいと考えている。


3. 記録波形ほか
 メキシコシティーユレダスが記録した地震波形を以下に示す。波形は上から、UD、NS、EWの順に示している。振幅の単位はmkine(1/1000cm/s)である。表示された時刻は、2003年01月22日02時07分00秒(UTC)からの経過秒数であり、最大0.5秒の誤差を含む。また、51秒付近の縦線はP波検知時刻、105秒付近の縦線はS波検知時刻を示す。
 これらの波形によると、最初の波動は比較的小さく、4秒程度経過した後、大きなP波動が到来していることがわかる。ユレダスは最初のP波を検知して3秒後に最初の推定諸元をCIRESのセンタに送信し、S波検知後直ちに二次情報を送信している。CIRES側のシステムはこれらの情報を1秒程度の遅れで受信している。なお、S波検知時刻は実際のS波到来よりも10秒ほど早くなっている。
 メキシコシティーでは検知から大きく揺れ出すまでに60秒〜70秒の時間がある。大きく揺れている時間は40秒以上に達しており、大きな規模の地震であることが分かる。現地の人(市内の比較的地盤が良いところで地震に遭遇)の話によると、2分以上揺れていたように感じられたようである。



     メキシコシティーユレダスによる2003年01月22日02時07分頃の地震の観測波形

             短周期速度波形(1Hz〜10Hz)
                 

             長周期速度波形(0.1Hz〜10Hz)
                 

             ユレダス検知時刻付近の拡大波形
             短周期速度波形(1Hz〜10Hz)
                 



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